タイトル | 百年の孤独 (One Hundred Years of Solitude) |
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オリジナル言語 | |
初出版年 | 1967 |
出版社 | 新潮社 |
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レーベル | |
翻訳者 | 鼓直 |
巻数 | 1 |
各巻の詳細 |
百年の孤独 492ページ |
どんな作品? → 都市伝説つめ込みまくり文学
さらに詳しくはYouTubeの動画でお話しますが、簡単に概要を私の言葉で。
南米はコロンビア出身の作家、ガブリエル・ガルシア=マルケスを一躍有名にした彼の代表作「百年の孤独」は、1967年に出版されると、そのあまりに魅力的な内容に話題が話題を呼んで瞬く間に大ヒットを記録、スペイン語圏で「まるでソーセージ並みによく売れた」という。また、その勢いはスペイン語圏だけにとどまらず、様々な言語に翻訳され世界中で反響を呼んだ。イギリスの新聞「The Economist」の2014年の記事によれば、この作品は30を超える言語に翻訳され世界中で5千万部以上を売り上げた、とのこと。これは単に文学という枠を超え、世界の歴代ベストセラー小説にもランクインするほどの売り上げである。実際に「スペイン語圏で聖書の次に多くの人に読まれている書物」とも言われることがある。
いったいどのような作品なのか?
物語は、作者ガルシア=マルケス (以下、彼の愛称である'ガーボ'と表記)が生まれ育ったコロンビアの田舎町、アラカタカをモデルにした架空の土地「マコンド」を舞台に、そこに移り住んだある一族の100年間の歴史を描いたもの。
この作品を特徴づける一番の要素として挙げられることの多いその【語り口】は、現実には起こり得ない魔術的な出来事が、さも当たり前のことであるかのようにストーリーの合間合間に平然と語られ、それはまるで「幻想と現実の世界が徐々に融合していく中で、もはやその境界線がどこなのかわからなくなる」、そんな感覚に読者を誘い込む絶妙なバランスのものである。その淡々とした語りの姿勢は最初から最後まで徹底されていて、物語の進行上かなり重大な出来事が起きている時でさえ終止一環、平然としたままである。
また、【文体】は心理描写などの内面的な要素を極限にまでそぎ落とし、そのほとんどが「どこでどういった事が起こったのか」という外面的な情報に終始した簡潔なもので、言わば「あらすじのみの味気ない説明文」のような書き方であるが、これを止まることなく延々と続けることによって、いくつもの短いエピソードを、次から次へとテンポ良くつないでいく事を可能にし、いざあるエピソード始まったかと思ったのも束の間、オチも布石の回収もされないまますぐに次のエピソードが始まり、それがある程度語られた頃にはもう次のエピソードが控えている、といった塩梅で、現実と幻想を融合させた異様なエピソードの数々が、物凄いスピードで次々と矢継ぎ早に語られていくスタイルを実現した。
見方によっては「最初から最後までほぼ全てがあらすじ」という、まるで長い一冊のあらすじを読んでいるような印象すら与える作品である。
1927年、コロンビア共和国のカリブ地方にある、当時人口約2千人ほどの寒村アラカタカに生誕したガーボは、生後すぐ、両親が仕事のために故郷から離れた都市バランキーヤへ引っ越してしまい、彼は母型の祖父母のもとへ預けられた。
ガーボの育ての親となる祖父母はどちらも優れた語り部で、土地に伝わる神話や伝承、また、実際に体験した出来事など様々な話を彼に語って聞かせた。
祖父二コラ大佐は、コロンビアのリベラル達からはヒーローとして尊敬されていた退役軍人で、自身が体験した戦争の話をリアルに語って聞かせた。
それに対して迷信や言い伝え好きの祖母ミーナは、即興で物語を作って語るのが抜群に上手く、超自然的で迷信的な非日常の出来事を、顔色一つ変えずにさも自然な事であるかのように語るのであった。
ガーボにとって彼女は「現実を魔術的、迷信的、超自然的な視点から捉える源」であったという。
現実と非現実の出来事をごく自然に織り交ぜて、日常と非日常の間を自在に行き来する、ガルシア=マルケス文学の語りの下地はこのようにして醸成されていったのである。
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